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定額減税はじまる!

 

定額減税がスタートしました!

 

サラリーマンは6月に支給する給与からです。

 

事業所の給与計算の委託を受けている社会保険労務士は、労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届の時期と重なり、過酷な月となります。当然、うちの事務所も!

 

このスキームでの定額減税は1998年、1999年以来となりますが、25年以上前のことで、ほとんどの実務担当者は初めての出来事ではないでしょうか。

 

市町村の住民税担当や事業所の給与計算担当者、税理士、社会保険労務士、給与計算ソフトの開発担当者などなど、怨嗟のころが聞こえてくるような気がします。当事務所の担当者からも・・・。

 

定額減税の対象となる税金と額は所得税3万円と個人住民税1万円の合計4万円です。被扶養者がいれば、本人とその人数分倍加されます。

 

減税の実務において、個人住民税は、普通徴収であれば減税が反映された金額を納税すればいいだけですし、特別徴収であれば減税が反映された各月の納税額を給与計算で控除し事業所がまとめて納付する形なので比較的シンプルです。

 

ところが、所得税減税は、所得税の種類や納付方法が各人でケースバイケースです。

 

大雑把にいいますと、事業所得や不動産所得のある方は確定申告の際、定額減税は実施されることになります。

 

年金受給者は雑所得ですが、定額減税の反映された年金が支給されます。

 

問題は、最大多数の給与所得者です。

 

基本的に給与所得者への定額減税は6月に支給される給与にかかる源泉所得税から3万円の定額減税が実施されることになります。3万円に達しない分は次月、次々月と繰り返され、それでも引ききれない分は年末調整、もしくは給付請求で精算されるようです。

 

給与所得者の定額減税について複雑なのは被扶養者の数に応じて、本人の定額減税額が決まってくる点です。仮に被扶養の配偶者と年少の子供二人、計3人の扶養者が入る場合、本人の所得税減税額は3万円×4人(本人、配偶者、子供二人)で12万円となります。

 

今回の定額減税実務の難しさはここにあります。

 

被扶養の判定は令和6年12月31日なのです。

 

分かりやすく解説するため、本人がA社、配偶者がB社でパート、高校生の息子がC社でアルバイト、大学生の娘がD社でアルバイトをしていた場合をみていきます。

 

まず配偶者です。家計を助けたい配偶者は、本人A社が加入する健康保険の扶養に入ることができる年収130万円未満の上限を目指してパートをしており、B社へは扶養控除等申告書を提出しているため、配偶者はB社からの給与で定額減税を受け、本人の所得税の扶養からは外れることになります。B社からの給与明細には減税設定額30,000円、減税前税額数千円、定額減税額数千円と入っているはずです。扶養には入れる給与所得の上限は48万円、支給額ベースでは103万円未満です。

 

次に高校生の息子の場合です。学業の妨げにならないよう月額3万円程度、C社から稼いでいます。息子の年収は36万円なので本人の扶養となります。本人の定額減税額が加算されることになります。ここで重要な点は、息子の働き先はC社のみであるため、C社へ扶養控除等申告書を提出している可能性が高いということになります。よって、C社が息子に交付する給与明細には定額減額3万円設定と入っていなければなりません。ここが岸田政権の最も力を入れている点です。減税前税額0円、定額減税額数0円も入っているはずです。月額88,000円未満なら源泉所得税はかかりません。

 

最後に遊ぶ金欲しさにバイトに励む娘の場合です。勤務先はD社のみのため扶養控除等申告書を提出しているためD社が娘に交付する給与明細には定額減額3万円設定となっていますが、月10万円以上ガッツリ働く月もあれば、そうでない月もあるので、6月時点で娘の年収を見積もることはとても難しくなります。仮に娘の年収を103万円未満と見積り扶養に入れててみたものの、結果的に103万円を超えてしまった場合は扶養から外れるので、本人の勤めるA社の年末調整で精算することになります。

 

以上のように扶養の判定を6月時点で行うことは大変難しいため、定額減税は年末調整でのみ行う、という判断をした事業所や税理士さんもいたようですが、これに対し、厚生労働省労働基準局監督課長は次のような見解を出しています。

 

定額減税を年末調整のみで行うことは、労働基準法第24条第1項違反になる。労働基準法第24条第1項において、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」。

 

定額減税についてはこちらもご参照ください。