定額減税の概要と実務

 

「令和6年度税制改正の大綱」(令和5年12月22日閣議決定)において、税制改正の内容が決定され、この大綱に沿った国税の改正法案が成立し、施行された場合には、令和6年度所得税について定額減税が実施されることとなります。一方、「地方税法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第4号)は、国会における審議を経て、 令和6年3月28日に可決、成立し、個人住民税も定額減税が実施されることとなります。

 

以下、所得税については4月中に源泉徴収事務のある事業所に熊本西税務署より配布された「令和6年分所得税の定額減税のしかた」を主に参照し、個人住民税については熊本市「市政だより6月号」のお知らせ掲示板で紹介された「定額減税の適用方法」を主に参照し、定額減税の概要と実務をまとめます。

 

所得税 定額減税の概要

定額減税の対象となる人

 令和6年分所得税について、定額による所得税額の特別控除(以下「定額減税」といいます)の適用を受けることができる人は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下)である人です。なお、「居住者」とは、国内に住所を有する個人または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。居住者以外の個人である「非居住者」は定額減税の対象となりません。

 

定額減税額

定額による所得税額の特別控除の額(以下「定額減税額」といいます。)は、次の金額の合計額です。ただし、その合計額やその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。

  1. 本人(居住者に限る)                     30,000円
  2. 同一生計配偶者及び扶養親族(いずれも居住者に限る) 1人につき30,000円

同一生計配偶者とは

令和6年(2024年)12月31日(納税者が年の中途で死亡しまたは出国する場合は、その死亡または出国の時)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる方をいいます。出国とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しないこととなることをいいます。

 

  1. 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)
  2. 納税者と生計を一にしていること。
  3. 年間の合計所得金額が48万円以下であること。その配偶者の所得が給与所得だけの場合は、給与収入が103万円以下であることとなります。
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

扶養親族とは

令和6年(2024年)12月31日(納税者が年の中途で死亡しまたは出国する場合は、その死亡または出国の時)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる方をいいます。出国とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しないこととなることをいいます。

  1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
  2. 納税者と生計を一にしていること。
  3. 年間の合計所得金額が48万円以下であること。給与所得だけの場合は、給与収入が103万円以下であることとなります。
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

個人住民税 定額減税の概要

 

令和6年度(2024年度)市民税・県民税について、納税義務者本人、控除対象配偶者及び扶養親族1人につき、令和6年度(2024年度)分の市民税・県民税が1万円減税されます。なお、令和6年度(2024年度)市民税・県民税が課税されている方のうち、均等割のみの課税者または前年の合計所得金額が1,805万円を超える方は対象外。

 

所得税 定額減税の実施方法

給与所得者の場合

 令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。

 また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。

  1. 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
  2. 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
  3. 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
  • 給与所得以外の所得があるとき
  • 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
  • 2か所以上から給与の支払を受けているとき 

公的年金等の受給者の場合

令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。

 

事業所得者等の場合

原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。

 

個人住民税 定額減税の実施方法

給与からの特別徴収

令和6年(2024年)6月は徴収せず、定額減税後の税額を令和6年(2024年)7月~令和7年(2025年)5月の11カ月に分けて徴収します。

 

普通徴収

第1期分(令和6年(2024年)6月分)の税額から順次控除します。

 

公的年金からの特別徴収

令和6年(2024年)10月の年金から特別徴収される税額より順次控除します。ただし、令和6年度(2024年度)に新たに公的年金から市民税・県民税を差し引いかれる方は、年度の前半は普通徴収ですので、定額減税についても普通徴収の方法で控除します。

 

所得税 給与支払者の事務

 

給与所得者に対する定額減税は、扶養控除等申告書を提出している給与所得者(いわゆる甲欄適用者)に対して、その給与の支払者のもとで、その給与等を支払う際に、源泉徴収税額から定額減税額を控除する方法で行われます。給与の支払者は次の二つの事務を行うことになります。

  1. 令和6年6月1日以後に支払う給与等(賞与を含みます)に対する源泉徴収税額からその時点の定額減税額を控除する事務(以下「月次減税事務」といいます)
  2. 年末調整の際、年末調整時点の定額減税額に基づき精算を行う事務(以下「年調減税事務」)

所得税 月次減税事務の手順

月次減税事務では、令和6年6月1日以後最初に支払う給与等に対する源泉徴収税額から月次減税額を控除します。控除しきれない部分の金額は、以後令和6年中に支払う給与等に対する源泉徴収税額から順位控除します。

 

控除対象者の確認

 令和6年6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者の人(その給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している居住者の人)(以下基準日在職者といいます)を選び出します。この基準日在職者が、原則として月次減税額の控除の対象となる人(以下「控除対象者」といいます)となりますが、その後、他の給与の支払者に扶養控除等申告書を提出した場合には、この人は控除対象者から外れることになります。

 この控除対象者の確認の時点においては、合計所得金額(見積額)を換算しませんので、合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる基準日在籍者に対しても、月次減税事務を行って下さい。

 なお、次に掲げる人は、基準日在職者に該当しませんので注意して下さい。

  • 令和6年6月1日以後支払う給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の乙欄や丙欄が適用される人(扶養控除等申告書を提出していない人)
  • 令和6年6月2日以後に給与の支払者のもとで勤務することになった人
  • 令和6年5月31日以前に給与の支払者のもとで退職した人
  • 令和6年5月31日以前に出国して非居住者となった人

同一生計配偶者及び扶養親族の数の確認

最初の月次減税事務を行うときまでに提出された扶養控除等申告書等により、以下のイからハまでの確認を行い、その提出日の現況における同一生計配偶者の有無及び扶養親族(いずれも居住者に限ります)の人数を把握します。月次減税額の計算の対象となる同一生計配偶者とは、控除対象者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除きます。)のうち、合計所得金額が48万円以下の人となります。また、月次減税額の計算の対象となる扶養親族とは、所得税法上の控除対象扶養親族だけでなく、16歳未満の扶養親族も含まれます。

 

イ 居住者である同一生計配偶者の確認

扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象者のうち、合計所得金額が48万円以下の人は、同一生計配偶者に該当しますので、扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者が居住者であり、かつ、「所得の見積額」が48万円以下であるかどうかを確認し、それらに該当する場合には、月次減税額の計算のための人数に含めてください。

 

ロ 居住者である扶養親族の確認

扶養控除等申告書に記載された控除対象扶養親族及び16歳未満の扶養親族(住民税に関する事項として記載されています)のうち、居住者である人の人数を確認し、月次減税額の計算のための人数に含めてください。