経営事項審査を受けるべきかどうか、ご検討中の皆様、迷っておられる方、多いのではないでしょうか。
言うまでもなく、経営事項審査を受けなければ公共工事を受注することはできませんが、そもそも公共工事を受注すること自体、現在の経営規模から無理だと考えられている方もいるかもしれません。
しかし、私どもの関与先の中にはかなり小規模であっても都道府県や市町村から工事を請け負っておられる会社がいくつも存在します。それぞれの営業努力の賜物とは思いますが、「意志あるところに道は開ける」という言葉を強く感じます。「為せば成る」です。確実に言えることは、一つ公共工事を受注すると確実に公共工事の受注が増えていくことです。公共工事の元請受注が増えていけば、会社の財務体質は確実によくなります。利益が残るようになります。公共工事の受注は信用の増大にも繋がり、民間からの受注増にもつながります。経営的にとてもいい循環に入るのです。
経営事項審査を検討されている方に朗報です。令和5年度、経営事項審査は 大きく改正されました!ポイントは次の三点。なお、令和6年度の改正は軽微です。
対面審査の廃止について
これまで経営事項審査は決算期ごとに対面審査の日時が決まっており、希望日時を予約するスタイルで実施され、審査は県庁の担当者と申請者の相対で行われてきました。時間にして20分程度ですが、担当者の指示に従い書類を提示し、シビアな質疑応答の時間は建設会社の皆様にとってストレス以外の何物でもなく、また、多忙を極める建設会社にとっては時間がもったいない、というのが本音ではなかったでしょうか。それが廃止されたのですから、経営事項審査は利用しやすくなったと言えるでしょう。
完成工事内訳書の廃止、請負契約書提示の大幅削減について
経営事項審査で準備する書類の中で最も時間のかかるのが完成工事内訳書でした。500万円以上の工事ごとに発注者名、元請下請・官公庁民間の別、工事名称、工事内容、工期、技術者名、工事金額、工事原価(材料費、労務費、外注費、工事経費)、下請発注状況(上位三者の業者名、発注金額)、施工体制台帳の有無など記載する項目は多岐にわたり、これらを工事請負契約書等の原本と照らし合わせながら確認が行われていました。この完成工事内訳書が廃止され、用意する工事請負契約書等も受審工事ごとに上位三件となったことは建設会社にとって朗報と言えるでしょう。
使用人の一覧表の廃止、提示書類の簡素化について
使用人の一覧表も廃止となりました。使用人の一覧表には氏名や生年月日の他、住民税特別徴収の有無、職種、最終学歴、経歴、実務経験年数、登録経理士など記載項目が多岐にわたり、時間のかかる作成資料でしたので、朗報と言えるでしょう。しかし、新規で実務経験を有するとして技術職員名簿に記載した職員は、実務経験証明書(資格試験合格後の実務経験が必要な場合も)が必要となります。なお、法人税納税証明書と県税納税証明書も廃止となりました。
まずは、お気軽にご連絡ください。
担当:宮本、携帯090-5941-5251
ところで、経営事項審査、略して経審とは何でしょうか?
よく聞かれますが、公共工事を受注するためのハードルの一つとお答えしています。
工事を発注する側の官公庁は多額の税金を使うことなので、いい加減な業者に仕事を発注することはできません。ずさんな工事で建物が倒壊しては一大事です。施工中または施工後、倒産されても大迷惑です。
そのため、官公庁は発注前に、この業者の施工実績は?財務内容は?技術力は?等々、様々な角度から官公庁は施工業者のことを調べなければなりません。
しかしこれでは、各官公庁にとってあまりにも煩雑です。
そこで設けられたのが、都道府県を窓口とする経営事項審査です。個別の大学入試におけるセンター試験にようなものとイメージすると分かりやすいでしょう。公共工事を受注したい業者は経営事項審査を受審することが必須となります。
経営事項審査の結果の提出を義務付けることで市町村などは業者の調査を大幅に簡素化することできます。
各市町村は経営事項審査の結果とは別に独自の審査項目を設け、公共工事を受注したい方の募集をします。概ね二年に一回実施される入札参加資格申請、一般的には指名願いです。大学入試に例えると願書に該当するでしょう。ここではじめて公共工事の入札を実施するための名簿が出来上がります。
入札には一般入札と指名入札の二種類ありますが、いずれも名簿登載業者のみ参加が可能となっています。またまた入試に例えると入札こそ個別の大学入試試験と言えるでしょう。
経営事項審査は、公共工事受注へ至る長い道のりの、はじめの一歩と言えます。
初めて経営事項審査を受審する場合若しくは昨年経営事項審査を受審していない場合、完成工事高については、2年平均をとる場合は2年分、3年平均をとる場合は3年分の認定が必要となります。完成工事高については、個人・法人の別、建設業許可の有無にかかわらず、契約書等で確認できる場合は認定されます。しかし次の場合は認定されませんのでご注意下さい。
※ 完成工事高が認定されないケース
個人で営業していて、法人成り後に許可を取得し、経審を受審する場合については、個人の営業期間の実績については、法人の実績とは認定されません。
(1)受審にあたっての必要書類
(2)申請書等の記入方法
経営事項審査は毎年受審するものであり、二度目以降はほぼ同じ考え方となりますが、初めての場合もしくは昨年受審していない場合はいくつかの点で考え方が異なります。ご注意ください。
経営事項審査では、①経営規模、②経営状況、③技術力、④社会性等の4つの項目で審査されますが、②経営状況分析は、国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関に対して、経営状況分析申請を行わなければなりません。
経営状況分析申請では財務諸表(貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書、兼業事業売上原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表)を提出することになりますが、この財務諸表は税理士さんが作成した決算報告書をそのまま送ればいいのではなく、税理士さん作成の財務諸表等をベースに建設業法に則った形で大幅に作り替えることが一般的です。また、初めて経営状況分析申請をする場合、財務諸表は今期、前期、前々期の三期分必要となります。
建設会社が直接申請することも可能ですが、行政書士の代理申請が一般的です。
工事種類別完成工事高の認定を2年平均にするか3年平均にするかによって、関連書類を2年分にするか3年分にするかが決まります。具体的には次のような書類です。
事業年度終了届は、これまでは届出確認が行われる程度でしたが、完成工事高内訳書の廃止に伴い、事業年度終了届を構成する工事経歴書、直前3年の各事業年度における工事施工金額、貸借対照表及び損益計算書は、経営事項審査の重要な提出書類となりました。気を付けなければならないのは工事経歴書です。今回の経営事項審査から提出書類となった請負金額上位三件の工事請負契約書との照合が行われます。
初めての経営事項審査では前期や前々期の工事経歴書も用意しなければならない点も要注意です。また、前期分や前々期分も例え作成されていても作り替えることになるケースが多いです。
令和4年までの経営事項審査では、工事請負契約書等は税込500万円以上の分だけ持参し、完成工事内訳書との照合が行われましたが、令和5年からは、経営事項審査を受ける工事業種ごとに元請下請問わず請負金額上位三件の工事について、工事請負契約書等を提出することになります。提出が必要な工事請負契約書等は金額にかかわらず請負金額上位三件ですから場合によっては遡及して工事請負契約書等を作成しなければならないケースも出てくるかもしれません。前期や前々期の工事請負契約書等も必要となります。ご注意下さい。
工事種類別完成工事高は、経営事項審査を受審する工事種類ごとに、完成工事高と元請完成工事高の集計金額を記載していくことになります。それも今期、前期又は前々期分も記載の必要があります。そして、その集計額は工事経歴書や直前3年施工金額の金額とも一致する必要があります。また、前期や前々期の工事経歴書ではその時の工事請負契約書も提出の必要があります。
初めての経営事項審査の場合、建設業許可を取得する前の期間も、契約書等で確認できる場合、認定されます。ただし、個人営業後、法人成りして法人で経営事項審査を受審する場合は、個人営業の期間の実績は認定されませんのでご注意ください。
令和4年までの経営事項審査では、対面審査が基本のため技術職員名簿と照合する技術職員の国家資格証や免許証の確認は原本が基本でしたが、令和5年からは郵送または電子申請による審査となりましたので、令和4年に確認済の国家資格証や免許証の確認は省略されることとなりました。
しかし、初めて経営事項審査を受審する場合は、当然、技術職員の国家資格証や免許証の写しを添付することになります。また、指定学科や実務経験で技術職員の資格を証明する場合は、指定学科の卒業証明書の写しや実務経験証明書が必要となります。技術職員の常勤性の確認は住民税特別徴収税額を通知する書面を添付します。
令和5年からは初めての経営事項審査も郵送または電子申請となります。いつ受けるかについては、下記の通り決算月によって決まります。受付の締日は毎月25日ですので、例えば、3月決算の法人の場合、7月25日までに経営事項審査の申請を完了することになります。
ただ、初めてのことなので多少は融通を利かせてくれるものと思われます・・・。
受付月 | 審査対象決算月 |
4月 | 10~11月決算法人 |
5月 | 12月決算法人、個人 |
6月 | 12~1月決算法人、個人 |
7月 | 2~3月決算法人 |
8月 | 4月決算法人 |
9月 | 5月決算法人 |
10月 | 6月決算法人 |
11月 | 7~8月決算法人 |
12月 |
8~9月決算法人 |
3月 |
受審要件を満たす者(予備日) |
経営事項審査の結果、受審した建設工事ごとに総合評定値が算出されます。これをP点といいます。公共工事を行う各官公庁は公共工事の発注リストである登録名簿を備え付けるのですが、この名簿はAランク、Bランクといった格付けがなされています。この格付けの重要なポイントとなるのが経営事項審査のP点です。このP点の良しあしにより、ランクが変わり、入札の機会や落札の確率が大きく変わってきます。
1点でも高い方がいいのが総合評定値P点です。
さて、どのような計算式で総合評定値P点が決まるか、ですが、概ね次の四つの審査項目で数値化が行われます。
大雑把に次のようにお考えください。
この項目は「完成工事高(業種別)」と「自己資本額、利益額」の二つに分けて審査されます。
単純に完成工事高が高いほど点数が上がります。ポイントの一つは業種別であることです。総合評定値を上げたい業種があれば、できるだけその業種の建設工事を増やす工夫が求められます。また、建設工事は一工事ごとに契約書単位で審査されますので、正しい契約書の作成が必要となります。完成工事高は二期平均か三期平均か選択することが出来ます。どちらを選択した方がP点が高くなるか、シュミレーションが重要です。
自己資本額と利益額それぞれで点数をもとめ、足して二で割ったもので数値が算出されます。まず、自己資本額ですが、大きければ大きいほど点数が上がります。ここで注意したいのは、自己資本額=資本金ではなく、自己資本額=純資産合計である点です。純資産=資本金+資本剰余金+利益剰余金ですから、必ずしも増資をしなくても、毎年の利益を積み重ねることで純資産額は大きくなります。つまり、公共工事を増やすためには納税も必要ということです。
次に利益額についてですが、営業利益+減価償却実施額が大きければ大きいほど点数は上がります。営業利益を上げるためには利幅の大きな仕事を増やしていくことですが、同時に儲かったお金は機械等の設備投資に回して、減価償却費を増加させることが点数アップの近道です。
自己資本額は今期か二期平均の選択が可能で、利益額は二期平均となります。
経営状況分析は次の8指標の数値をもとに算出されます。外部の経営状況分析機関に財務諸表に基づく数値を送って算出されます。
上記の数式をどうすれば最適化できるか、なかなか難しい問題です。大雑把に次のように心がけるといいでしょう。
上記のようなことを心がければ小規模事業所でも経営状況分析の結果は劇的に改善できます。
この項目は「技術職員数」と「元請完成工事高」に分けて審査されます。
【技術職員数】
技術職員数におうじて数値が上がりますが、やみくもに従業員を増やせばいいわけではなく、
点がポイントです。
単なる実務経験上の技術者と一級の国家資格者で監理技術者資格者証の交付を受けた技術者では6倍もの違いがありますので、従業員に上位資格の取得を促すなど戦略的な取組が求められます。
【元請完成工事高】
元請完成工事高が大きければ大きいほど数値が上がります。完成工事高と同じく二期平均か三期平均で選択できます。工事完成工事高と元請完成工事高の二期平均、三期平均は合わせる必要があります。
「その他社会性」の項目は売上や景気の変動による影響を受けにくい、基礎点が稼げる分野なので、確実を点数を稼ぎたいところです。以下、9つに分けられます。
従業員に対する福利厚生が問われ、減点項目と加点項目に分けられます。
<減点項目>
<加点項目>
以下の法律の認定状況により加点されます。
<建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況>
単純に6年目から一年ごとに点数がアップします。
国、特殊法人等又は地方公共団体との間で災害時の防災活動等について防災協定を締結している場合に加点されます。基本的にコスト無く点数を上げることが可能なので是非締結したいものです。
【法令順守の状況】
建設業法上の指示や営業停止があった場合に減点されます。
監査受審状況と公認会計士等の数に分けられ監査受審状況はほとんどの中小企業で無縁だとは思いますが、公認会計士等の数の方は、従業員さんに建設経理士二級を取ってもらうだけで加点されますのでご検討いただきたいとたいと思います。
【研究開発の状況】
会計監査人設置会社において、研究開発費の額に応じて加点されます。
建設機械の保有状況により加点されます。
【国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況】
下記の認証登録状況に応じて加点されます。