完成工事高評点(X1)は、直前2年又は直前3年の平均完成工事高の額に応じて与えられますが、言うまでもなく平均完成工事高が高い方が高い点数となります。いかにして総合評定値を上げるか、あるいは公共工事の受注の機会をいかにして上げるかを考えた時に、完成工事高の評点は最も重要な指標だと断言できます。理由は以下の通りです。
完成工事高評点は、直前2年または3年の平均完成工事高の額に応じた下記の算出式に当てはめて計算します。完成工事高は、元請、下請を合わせた合計額になりますが、受審する工事種別毎であることがポイントです。
例えば、平均完成工事高が「1億円」の場合は次のようにして評点を求めます。
19×1億円(100,000千円)÷20,000+616=711
X1の評点は711です。
平均完成工事高は千円単位であることがポイントです。
総合評定値(P)の算出式は
総合評定値(P)=0.25(X1)+0.15(X2)+0.2(Y)+0.25(Z)+0.15(W)
ですので、X1のP点換算値は
X1評点×0.25(小数点以下四捨五入) で求めることができます。
711×0.25=177.75 よって P点換算値は 178 です。
このように平均完成工事高が分かれば容易にP点換算値を求めることができます。ただし、いちいち電卓を叩くのも難儀なので早見表を作成しました。ご参考下さい。
完成工事高評点は、直前2年または3年の平均完成工事高の額に応じた区分の算出式に当てはめて計算します。算出式はちょっと複雑なので下記に早見表を用意しました。ご参考下さい。平均完成工事高は、元請、下請を合わせた合計額となりますが、受審する工事種別であることがポイントです。
早見表を見ていただくと一目瞭然ですが、平均完成工事高が増えるほど、評点は高くなります。X1評点のほか、総合評定値P点も表示しています。経審の点数と言えばP点のことなので、平均完成工事高がいくらになればP点は何点になるのか、常に意識すると自然と格付けは上がっていくと考えます。
X1評点に0.25をかけると総合評定値P点となります。
経営事項審査で受審する工事種別が一種類の場合、2年平均か3年平均か、選択の余地はありません。評点の高くなる方を選択すればいいだけです。ただし、選択した結果は、X1(完成完成工事高)の評点だけでなく、Z(元請工事高)の評点にも反映されますので、総合評定値(P)で考えることが重要です。
複数の工事種別で受審する場合は、2年平均と3年平均のシュミレーションで各工事種別毎の総合評定値(P)を確認することが重要です。最も重視する工事の最大化を図るのか、全体的に上がる方を選択するのか、悩ましい場合もあるかもしれません。
つまり、2年平均か3年平均の選択は、工事種別ごとに変えることはできませんし、X1(完成工事高)とZ(元請完成工事高)で変えることもできません。
建設資材や住宅設備の販売を兼業としている建設業者で、販売と合わせて設置工事を行う場合は、資材や設備の金額が設置工事費より高額であるときでも、兼業事業売上ではなく、完成工事高としなければなりません。資材や設備の仕入代金は材料費となります。設置工事費の追加により完成工事高をする際の注意は、建築一式工事であれば1500万円以上、専門工事であれば500万円以上のとき、該当工事種別での建設業許可が必要になることです。業種追加等をご検討ください。
資材や設備を販売するだけでなく、積極的に設置工事も受注していくことは、X1(完成工事高)の評点アップにつながります。
経営事項審査では、審査を受ける工事種別は選択することができます。審査を受けない工事種別の完成工事高はその他完成工事高となり、評点の対象とはなりません。
このような場合、審査を受ける工事種別に関連する他の工事種別で、審査を受けない工事種別の振替を行うことが認められています。振替が行われた工事種別は受審ができなくなりますが、特定の工事種別の評点アップを図ることができます。熊本県で振替の認められる工事種別は下記の通りです。矢印の方向で振替を行うことができます。
振替が認められるのはどちらの工事種別でも建設業許可を受けている場合です。軽微な工事で建設業許可をうけていない工事種別は下記の表の振替に該当する場合でも振替はできず、その他完成工事高に入り、評点の対象となりません。振替を希望される場合は業種追加等を工事種別の拡大をご検討ください。
土木 一式 |
← |
とび・土工・コンクリート、石、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、 舗装、しゅんせつ、鉄筋、水道施設、解体、他土木工事業に関する工事 |
建築 一式 |
← |
大工、左官、とび・土工・コンクリート、屋根、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、内装、建具、解体、他建築工事業に関する工事 |
とび・土工・ コンクリート |
⇔ | 石、造園 |
電気 | ⇔ | 電気通信 |
管 | ⇔ | 水道施設 |
内装 | ⇔ | 建具 |
屋根 | ⇔ | 板金 |
期末未成工事の評価方法を「工事完成基準」から「工事進行基準」に変更することで完成工事高を増加させることができます。工事完成基準では、建設工事は施工検査を経て発注者に引き渡された時点で売上高として認識されますが、工事進行基準では、期末未成工事の進行具合に応じて完成工事高に計上することができます。ただし、税務上重要な問題となりますので、税理士さんとくれぐれもよく相談されてください。
複数の工事種別を一枚の工事請負契約書にまとめることはよくあることです。その場合、複数の工事種別毎の契約とはみなさず、主たる工事でまとめることが一般的です。
例えば、電気工事300万円、管工事200万円、機械器具設置工事100万円を一本の契約にまとめた場合、主たる工事は電気工事とみなされますので、600万円の電気工事の契約書となります。
次に、電気工事200万円、管工事300万円、機械器具設置工事100万円のとき、電気工事の評点を上げたい会社の方針があった場合、管工事300万円の契約書と電気工事200万円・機械器具設置工事100万円の契約書に分けて発行すれば、電気工事の完成工事高は300万円で計上できます。
X1(完成工事高)は下請工事でもOKなので、自分と同レベルもしくは上位レベルの同業にひたすら営業をかけまくるのが最も基本的なX1対策です。独立した頃を思い出して一心不乱に頭を下げましょう。その際ポイントとなるのは相手方の決算月です。どこもその年の完成工事高は積み増したいものなので、下請工事を利用するケースは自ずと増えるはず。営業は常に相手の立場に立って行いましょう。
X1の評点アップの対策は基本的に完成工事高をいかに積み増すかです。特に完成工事高が少ない中小企業では、中小企業優遇のため計算式が配慮されているため、ちょっと完成工事高が増えてくると、どんどん評点が上がってきます。ところが、完成工事高受注増のため安請け合いに走り利幅が薄くなると、たちまち、X1以外の指標が悪化し、総合評定値の伸び悩みにつながります。X2は利益額と自己資本額なので、利益が低下すると指標は下がります。中小企業こそ指標が上がりやすいY(経営状況評点)でも利益性が重要な指標となっていますので、利益率の低下は評点の減少に直結します。くれぐれも注意しながら評点対策を行って下さい。